【世間の常識は自分が作った思い込みだった】書作家・玲奈さんが大切にする、自分に嘘をつかない生き方と美学

効率や売れることが最優先されがちな現代において、私たちはどれほど「自分自身の本当の感情」や「譲れないこだわり」を信じて生きられているでしょうか。

SNSを開けば膨大な情報が流れ込み、
「何者かにならなければいけない」
「世間一般の正解に合わせなければいけない」
という、焦りや不安を抱えてしまいがちな時代です。

今回は、元々安定した銀行員というキャリアから、今は書作家として自らの想いを表現し続ける玲奈(れな)さんにお話を伺いました。

彼女が書を通して届けたいメッセージ、固定観念や世間の「正しさ」を脱ぎ捨てたきっかけ、そしてこれからの変化が激しい時代において「自分軸」を持ち、心地よく生きていくためのヒントを語っていただきました。

「想いのない表現は、人の心を動かせない。」表現者としての揺るぎない原点


玲奈さんは、書作家としての活動や表現において「自分の感情や想い」を何よりも大切にされていますよね。



そうですね、私にとって表現は、言葉では伝えきれない想いや願いに形を与え、届けるものです。

だからこそ、自分自身が心から共感できることを何より大切にしています。

独立したばかりの最初の頃は、「まずは知名度を上げなきゃ」「何でも経験だ」と思って、自分の想いと重なりきらない活動に挑戦したり、とにかく作品を大量生産するようなお仕事も受けていた時期がありました。でも、それを続けていると、だんだん心が辛くなってきてしまって……。

そこで気づいたんです。私にとって書道は、ただ綺麗に文字を書くための技術や道具ではなく、「自分の内側にある想いや感情を届けるための大切なツール(手段)」なんだなって。

効率や売れることが大切な時ももちろんあります。
でも、それだけを目的に動くのではなく、「自分自身の想いがそこにちゃんと宿っているか」を一番の判断基準にしようと心に決めました。


自分の中で「感情が乗っているとき」と「そうでないとき」の違いは、明確にわかるものですか?



全然違いますね!感情や想いが乗っているときは、もうワクワクしてアイデアが止まらなくなるんです。夜中でも「もっとこうしたら面白くなるんじゃないか」「こんな提案をしてみたい!」って、次から次へと思いついて夢中になれます。

納得いくまでとことんこだわりたいタイプなので、添削や修正を何度も重ねながら言葉一つひとつの選び方を詰めていく時間すらもすごく楽しいんです。

自分に嘘をつかないこと、そして自分が本気で熱中・熱狂できること。そうやって生まれた命の通った作品や言葉だからこそ、見てくれた人の心に届いて、「自分も新しい一歩を踏み出してみたい」「挑戦してみたい」と背中を押すきっかけになれたらと思います。



「世間の常識」は、過去の自分が作った思い込みだった

銀行員という安定した職業からフリーランスのアーティストへ転身される際、周りからの反応や自分の中での葛藤はありましたか?



やっぱり最初は、「せっかく大学まで出たのにもったいない」「本当に食べていけるの?」「これからどうするの?」といった心配の声をたくさんもらいました。直接的に引き止められなくても、そう言われるたびに「本当に大丈夫なのかな……」って急に自分の中で不安が大きくなってしまうこともありました。

昔の私は、「社会人とはこうあるべき」「世間一般の普通や正しさからはみ出してはいけない」という枠に強く縛られていたんです。


その固まっていた固定観念や世間の「正しさ」は、どのようにして解放されていったのでしょうか?


実際に、自分が理想とする生き方や面白い働き方をしている人たちに、自ら会いに行ったのが一番の大きなきっかけでした。

会社員時代、さまざまな生き方をしている人に会ってお話を聞くうちに、自分の価値観がまるで一枚一枚皮を剥がされるように変わっていく感覚があったんです。

昔は「アーティストや自分らしく生きている人」って、生まれつき特別な才能を持った一握りの天才か、あるいは何かを完全に捨て去って信念だけを貫いているような遠い存在だと思っていました。

でも、実際に会いに行って話してみると、みんな現実の課題と向き合いながら「自分はどう生きたいのか?」を愚直に考え続けている人たちだったんですよね。

白か黒かの二者択一ではなく、その間にある曖昧なグラデーションの中で、自分なりのポジションや働き方を模索して創り出していたんです。

「あ、世間が言う『正しさ』って、実は過去の自分の体験や親の意見で作っていた、ただの思い込みだったんだ」と気づいてからは、一歩踏み出すのが怖くなくなりました。

自分が変わると出会う人も変わり、自分を取り巻く「常識」そのものが塗り替えられていきました。


人間関係を楽にする「95%の信頼」と「5%の余白」


活動を続けていく中で、さまざまな人やコミュニティと関わる機会が多いと思いますが、人間関係で心がけていることありますか?



ある方の言葉で、大切にしている考え方があります。それが、「人を100%信じ切るのではなく、95%の信頼と5%の余白を持つ」ということです。

相手を100%信じて過度な期待を寄せてしまうと、もしその人の考え方や環境が変わったときに、「なんで?」と苦しくなってしまうことがあるんですよね。

でも、「5%の余白」を残しておくことで、「人なんだから考えが変わることもあるよね」「お互いに変化していくものだよね」と、相手のありのままを寛容に受け入れられるようになるんです。


相手に期待しすぎず、自分と相手の両方に「余白」を作るということですね。




そうなんです。昔の私は「頼まれたら断れない」性格で、気づけば相手のペースに合わせすぎてしまい苦しくなることがよくありました。でもそれって、相手だけが原因ではなく、「断れない状態の自分」がその状況をつくっていた部分もあったんですよね。

「相手がどう思うか」に振り回されるのではなく、「今、自分自身の状態はどうだろう?」と自分の内側に意識を向ける。そうやって自分軸で物事を捉えられるようになってからは、他人に過度な期待を執着することがなくなり、人間関係が本当に穏やかで楽になりました。


これからの未来、最後に残るのは「自分の内側の探求」


AIの台頭や社会構造の変化によって、生き方や働き方がますます流動的になっています。これからの時代をどのように見据えていますか?


これからの時代、マニュアル通りの作業や効率重視の仕事はほとんどAIやテクノロジーが代わりにやってくれるようになりますよね。だからこそ、「自分は何が好きで、どう生きたいのか」という自分の内側を探求することが、これまで以上に本質的な意味を持つと思っています。

SNSが発達した現代は、他人の活躍や情報が嫌でも目に入ってくるため、「何者かにならなければ」と外側と比較して焦りがちです。でも、他人の軸や流行に合わせて生きようとすると、どこかで絶対に歪みが生じて苦しくなってしまう。

誰かが作った正解に合わせるのではなく、子どもの頃に純粋に好きだった原点に立ち返ったり、五感を使って自然や美しい言葉に触れたりして、自分の感覚を取り戻していくこと。

「自分の幸せの基準は自分で決めていいんだ」と自分自身に許可を出してあげることが、これからの時代を軽やかに、私らしく生き抜くための鍵になるのではないでしょうか。

最後に



効率性や即効性が求められがちな現代において、玲奈さんの「想いを置き去りにしない」「自分の感情にどこまでも誠実でいる」という姿は、とても深い勇気を与えてくれます。

世間が求める「正しさ」の枠から一歩踏み出し、自分の内側にある情熱の火を灯し続けること。

「自分にとって本当に大切なものは何か?」
玲奈さんとの対話は、慌ただしい日々の中で忘れかけていた自分自身の声に、静かに耳を澄ませる豊かな時間を届けてくれました。